コラム

【コラム】足もとの地価と不動産市況の先行き見通し|新型コロナの影響

3月に発表された「公示地価」では、2020年1月1日時点における全国の地価状況が引き続き堅調であることが確認されました。

ただその一方で、今後「新型コロナウイルス」による実体経済への打撃が甚大なものになると予想される中、これまでの堅調さを持続することは困難であるという見方が大勢を占めてきています。

今後の地価および不動産市況がどのような価格動向となっていくのか、検討してみたいと思います。

新型コロナの不動産市況への影響

まず、新型コロナウイルスの不動産市況への影響度合いについてですが、地価および住宅価格、そしてオフィスビル関連や商業施設等の価格動向というように、その種別ごとに差は出て来るものの、結論としては「総じて非常に大きなマイナスの影響を受ける」のは不可避と言えるでしょう。

影響の受け方としては、2つのことが想定されます。

まず第一に、実体経済における経済活動の収縮による不動産関連向け設備投資等の縮小。そして第二に、外国人投資家を中心としたこれまでの不動産市場への積極的な資金流入の逓減です。

ウイルスの蔓延防止策の一環として、政府が「非常事態宣言」を出し、各種商業施設や遊興施設など、いわゆる”三密 (密閉、密集、密接)”に該当する空間での営業を前提とする業種を中心に、その活動を休止または縮小することを要請し、経済活動が著しく制限されることで関連企業の業績は大幅に悪化することが見込まれます。

その結果、「既契約物件の家賃が払えなくなる。」「積極的な新規出店を抑制する。」などといった動きが相次ぎ、不動産市況は悪化することが確定的とみられています。

遊興施設や飲食店などの業態というのは、短期でのキャッシュフローをベースに資金繰りを行っていることがほとんどで、そこが制限されてしまうと、各種の支払いが滞ってしまう事態になるのです。

要は、「”日銭”が入って来ないと、払えるもんも払えない。」となってしまうのです。

これが実体経済での活動収縮による不動産市況への悪影響です。

さらには外国人投資家を中心に、これまで日本国内の不動産市場に対して強気の投資姿勢を示していた投資家がその姿勢を消極化する事で、不動産価格の下落を招く事態が予想されます。

これまで外国人をはじめとした不動産投資家は、日本国内の優良物件を多く抱えるホテルチェーンやREIT関連の会社等に対して買収を仕掛けるなど、日本の不動産市場に対して強気の見方をベースとした動きを取り続けてきました。

しかし、今般のコロナウイルスの影響により、彼ら投資家が既に保有している不動産物件やその他資産の価値が大きく減少してしまう事で、それまでの強気姿勢が一転、弱気なものへと変わってしまう可能性が取り沙汰されているのです。

外国人投資家に限らず、不動産投資を行う投資家全般において、先行き見通しが不透明化することによる投資姿勢の消極化は起こってくると見られていて、堅調な地価および不動産販売状況はもはや維持できないと見るのが妥当だと思われます。

働き方改革・人材難の副作用

不動産市況が影響を受けるものとして、近年の「働き方改革」や企業の「人材不足」といった側面も挙げられるかと思います。

例えば、これまで単に”働く場所”としてしか認識されて来なかった”オフィス”が、各企業の戦略的位置づけを持ち始めているといった動きなどです。

企業がより充実した設備を備えたオフィス空間を作り上げ、働き方改革による時短勤務やリモートワークでも生産性を落とさせないような環境を構築したり、優秀な人材からの自社の評価を高めるために自社のオフィス空間に開放的な会議スペースやカフェテリア、共有スペースを設けたりといった動きが活発化しています。

こうした企業側の意識変化を反映する形で、東京圏の商業地は地価が5.2%上昇(7年連続上昇)するなど、オフィス需要の高さが伺える動きが確認されています。

もともと2018年から2020年ごろにかけては、大規模なオフィスの供給過剰による市況の悪化が懸念されていたものの、20年開業の新築ビルがほぼ満室状態となるなど、引き続き堅調な需要情勢が継続しているとみられ、大きな変化は見られていませんでした。

ただ、そうした堅調さも新型コロナの影響で一変する見通しです。

新型コロナによる実体経済の行き詰まりで、企業の景況感が悪化することで、今後空室率が上昇し始めるといった懸念はくすぶり続けます。

「新型コロナの影響が半年継続すると、空室率が2.4%上昇する。」といった試算もあるように、業績の悪化による不動産市況への下落圧力は免れないでしょう。

それに加えて、前章でも触れた”投資家の積極姿勢の後退”が追い打ちをかける事で、国内におけるオフィスビル等の開発案件の頓挫といった事態も次々と発生してくる可能性もあり、不動産市況動向は非常に緊張感が漂う状態となりそうです。

新型コロナ対策によって人の行き来が制限され、購入検討物件の調査等の活動が行えなくなってしまうといった事態も実際に起こっているために、新規の投資案件がストップしてしまうなど、今後もその影響は拡大していくものと思われます。

株式市場では既に不動産市況の悪化を見込む動きも出始めており、地価動向や不動産市況全体への波及のタイミングを見極めるためにも目が離せない状況となっています。

マンション市場の行方

マンション市場はどうでしょう。

足もとのマンション販売動向をみてみると、都心部で”億”を超えるような価格・規模の超高級物件がすぐに予約で埋まったり、駅チカなど住環境が良好な優良物件を中心に好調な需要が確認されているようです。

建設業者の人手不足による建設費の高騰や、マンション以外の需要先(ホテルやオフィスビル建設)との土地争奪戦による地価の高騰等により、マンション価格は高値更新を続けるような状況にあるものの、それ以上に旺盛な需要が継続しているため、販売状況は活況を維持している状態です。

特に首都圏においては、マンションの販売価格がバブル後の最高値を超えてくるなど値上がり傾向は当面続く、、とみられていました。

が、ここでもやはり新型コロナの影響が出てきそうな情勢です。

もともとマンションや戸建住宅のような”住居”の価格動向というのは、不動産の中でも”実需”と呼ばれ、景気動向に大きく左右されることもなく、ある程度安定した値動きを示すとされています。

雇用情勢や所得水準が大きな転換点を迎えるような局面に差し掛かれば、その影響を色濃く反映することになるわけですが、今般の新型コロナによってそうした状況が生まれる懸念が出てきているのです。

前述の通り、事業分野における商業施設やホテルなどの建設において、その先行きに暗雲が垂れ込めている一方で、実はマンション市場ではプラスの側面も見て取れます。

それは”用地確保”の面においてです。

これまでマンション開発の競合先(ライバル)と捉えられてきたホテルやオフィスといった業界からの需要が減退することで、用地確保がしやすくなるという側面もあるのです。

ただし、マンションの購入目的には、住居としての実需の他にも、富裕層のや投資家の投資目的といったものもあり、そうした視点からは、中長期における資産価値の目減りが懸念されるような状況となれば需要も減退することが予想されます。

景気後退局面におけるマンション等不動産の販売状況では、リーマンショック後の局面で、行き過ぎた値下げによる不動産の”たたき売り”が頻発し、中小規模の不動産会社が次々と倒産するような事態も起きたりしていましたので、今後のマンション価格の動向もそのような軌跡をたどる可能性は否定できません。

まとめ

結局のところ、現時点においては「新型コロナの影響を見定めるより他ない」という結論に帰着してしまうのですが、一つ確実に言えることは「その影響度合いというのは、ワクチン開発までの一時的なものにとどまらず、長期にわたって実体経済に甚大な爪痕を遺すことが確実である」という事です。

したがって、不動産市況動向について推察するにあたっては、新型コロナの実体経済への影響がどこまで拡がっていくのか、そして不動産の需給にどのような形で影響を及ぼしていくことになりそうなのか、という観点で見ていくことが大切です。

首都圏の新築マンションがバブル期の最高値を更新するなど、かなり過熱感も出て来ていた不動産市況に対し、”冷や水”を浴びせる格好になる今回のコロナ渦ですが、購入検討もしくは売却検討をしている方にとっては、改めて戦略を練り直す必要が出て来るでしょう。

好調な地価情勢から一転、先行き見通しが非常に不安定さを増してきた中において、今後もその価格動向からは目が離せません。

署名

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

当サイトの記事が少しでもあなたのお役に立てたなら、下記シェアボタンから是非シェアをお願いいたします。

たくさんのシェアが当サイトをより充実させようという”やる気”に繋がります!

シェアいただいた方、ありがとうございました。

-コラム

© 2024 不動産をわかりやすく・セルフ