不動産を売却するためには、実に様々な手続きが必要になってきます。
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そういった手続きの流れを知っておきたいと思うと同時に、売却に際して、同じぐらい気になる事はと言えば、やはり「手数料」のこと、つまり「不動産の売却に際して、自分の場合であればいくらぐらい費用が必要になってくるのか。」ということではないかと思います。
これは、あなたの最終的な『手取り額』に直結してくる話でもありますので、ことさら気になるという方がいるのも十分頷けます。
”不動産売買”というと、何かややこしそうな手続きや難しい処理が必要で、詳しくはよく解らないけれど色々な費用が掛かってきそう、というようなイメージだけはなんとなく持っているという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、不動産売却に係る費用及び手数料について、一体どういったものが必要になり、どのぐらいの金額を負担することになってくるのかということについて、その全てを整理し、解説していきたいと思います。
不動産業者に売却の仲介を依頼するためにはいくら必要で、各種登記や手続き等に係る印紙代や費用といったものがどのぐらい必要で、最終的に、売却代金のうち手元に残るのは一体いくらぐらいになるものなのか、あなたのケースにあてはめて検討してみてもらえればと思います。
これを読めば、あなたが今回の不動産売却を完了させるまでに、一体どのくらいのコストを想定しておけば良いのかということが予め理解できるようになりますので、是非最後まで目を通してみてくださいね。
それではさっそく見ていきましょう。
Contents - 目次 -
不動産を売却する際にかかる費用の全て
結論から申し上げておきましょう。
不動産を売却する場合、売却が完了するまでに必要となる費用というのは、
- 不動産業者への仲介手数料
- 売買契約書にかかる印紙税
基本的にはこの2点だけです。シンプルですね。
ただし、これらの費用というのは、不動産の売却に”直接的”に関わる主要な項目だけをピックアップしたもので、いわば「必ず必要となる費用」とも言うべき部分になります。
そのため実際にはこれらに付随して、売主及び買主の個別事情、そして物件自体の置かれた状況等により、他にも様々な費用が発生する可能性があるということも考えておかなければなりません。(今回はこちらの費用を「場合によって必要となる費用」と呼びます。)
では、そのような「場合によって必要となる費用」というものには、どのような項目が考えられるのかと言うと、
- リフォーム・クリーニング・解体費用
- 土地境界確定測量費用
- 抵当権抹消登記費用・司法書士費用
- ローンの一括返済費用
- 税金 (譲渡所得税、住民税、復興特別所得税)
- 引越し費用
このような項目が挙げられます。
先ほど申し上げたように、一言で「不動産を売却する。」とは言っても、売主の経済的な背景や希望する売却方法、あるいはその物件自体の現況や買手側との引渡し方法等に関する交渉内容等によって、その時必要となってくる処理や手順というのは様々です。
したがって、一概に「不動産売却にはこれだけの費用が掛かります。」と言い切ってしまうことはできません。
しかし、そこはやはり「私の場合はどれだけ費用が必要なのか知りたい。」というのが本音でしょう。
そんな時、最も手っ取り早く、自分の状況に照らした形で、正確な査定・見積もり額を知りたいという場合には、『一括査定のサービス(ネット上で簡単な予約をすれば、複数社に査定・見積りをしてもらえるサービスです。無料で利用可。)』を利用して把握するのがベストです。
ただ、「見積り金額の正確性は今はちょっと置いておいて、ざっくりにでもどのぐらいの費用がかかるのか知っておきたい。」という方のために、ここではそれぞれの費用項目について、様々な状況を想定した場合に必要になるであろうものを網羅した上で、少なくともどのぐらいの金額になることが多いのかといった”水準”をお示しすることで、あなた自身の売却状況に照らし、自分の場合であればどの項目が費用として必要になりそうかということをイメージできるようにしておきたいと思います。
費用項目の中には、交渉の過程を経てからでないと発生するかどうかが判らないものというのもあるかと思いますが、とりあえず一通り目を通しておかれることをおすすめします。
予め漠然とでも頭にイメージを残しておくことで、今後売却手続きを進めていく中でそういった話が出て来た際にはスムーズに理解することが可能になるかと思います。
それでは、各項目について詳しく確認していくことにしましょう。
必ず必要となる費用
まずはじめに、不動産の売却で「必ず必要となる費用」、2項目について見ていきたいと思います。
不動産業者への仲介手数料
1つ目は、「不動産業者への仲介手数料」です。
これは誰でもイメージがつくのではないかと思いますが、一言で言い表すならば、あなたが不動産業者に、自分の代理人として手続きや交渉などを行ってもらうことに対して支払う「報酬」です。
この「仲介手数料」に関しては、実は不動産関連の事業者およびその事業活動について規定する「宅地建物取引業法」という法律で、その料率が決められています。
そしてその内容はと言うと、
【不動産売買の媒介に係る不動産業者の手数料率の上限】
- 代金額 200万円 以下:【 5% 】
- 代金額 200万円超 400万円 以下:【 4%+2万円 】
- 代金額 400万円超:【 3%+6万円 】
このようなテーブルとなっています。(ちなみに「仲介」のことを法的には「媒介」と言います。意味は同じです。)
不動産の売買を行う場合、余程のことが無い限りその取引価格というのは【400万円】を超えてくる場合がほとんどかと思われますので、イメージとしては「【約3%】が不動産業者へ支払う手数料として必要なんだな。」と覚えておけば良いかと思います。
そしてこの「料率」については、規定されているのが”上限”であるということも是非ここで抑えておくようにしましょう。不動産業者によってはこの仲介手数料の額を上限より低く設定しているという所も存在します。
ただし、もし手数料が上限に達しないような低めの設定がなされている不動産業者を見つけたとしても、他の条件を考慮せずしてその不動産業者とすぐに媒介契約を結んでしまうというような軽率な判断は禁物です。
不動産業者を選ぶ際に最も重視すべき点というのは、あくまで「その業者がどのくらい高い能力を有しているのか」ということです。
ここで言う”高い能力”というのは、もちろんあなたの不動産を高値でスムーズに売却し、的確な処理によって安心感のある取引を実現できる能力ということになるわけですが、考え方としては、こうした能力の部分を最優先に選別を行い、手数料率というのは「安ければラッキー」というぐらいに捉えておくようにしましょう。
要は、不動産業者を選ぶ際には、必ずその”総合力”で判断するという姿勢が非常に重要であるということです。(不動産業者の選び方については、 NO35 )
なお、この「媒介」にかかる手数料というのは、不動産業者からしてみればあくまで「成功報酬」という位置づけとなっています。
つまり、あなたがこの手数料を支払うべきタイミングというのは、あなたが「不動産業者と媒介契約を結んだ時点」ではなく、通例、実際に売却が決まり「買主側と売買契約を締結した時点」でまず手数料の一部を、そして「物件の引渡しを終えた時」、つまり売却が完全に完了したタイミングで残りの部分を不動産業者に支払うということになっています。したがって、万が一売買が成立しなかった場合には、支払う必要はないということです。
また、追加請求としての「実費」部分についても理解しておいた方が良いでしょう。
これは必ず必要になるものではありませんが、端的に言うと、売主側(あなた)が別途特別な対応等を依頼した際に、それに要した費用については上記の手数料率には含まれず、別途支払いをする必要があるというものです。
具体的には、売主が指定する特定の地域・場所においてビラ配りやその他広告活動を行ってもらうといった場合や、特定の買主の所へ個別に交渉に行ってもらうことを依頼するといった場合の人件費・交通費などについては、上記手数料率にその費用は含まれておらず、別途依頼者側である売主が負担する必要があるということです。
ちなみに、こうした「不動産業者に対する手数料体系」全般について、基本的な事項を理解しておくことによって、不動産業者を見極めるという場面においてもその知識を役に立てることが可能です。
つまり、こうした手数料率というのはあくまで”上限”であるにも関わらずその料率が”規定の料率”であるかのような説明をしてきたり、上限が決まっているにも関わらず当然の様にそれを超過する金額を請求してきたり、本来基本的な仲介業務としての行為に含まれるはずの広告費等について追加で費用を請求してきたり、といった業者は明らかに”虚偽の説明”および”不当な請求”をしているのであり、そういった不動産業者は一切近寄らせないという判断ができるわけです。
不動産業者関連の費用および留意点をまとめると、
- 仲介手数料は約3%とイメージ (売買代金400万円超)
- 3%はあくまで上限
- 不動産業者を手数料率だけで判断しない
- 業者への支払いは売買が成立した時点以降
- 売主側の個別要請等は別途実費負担必要
- 手数料率について曖昧な説明および虚偽の説明をする、もしくは不当な請求をしてくるような業者には十分気を付ける
このようになります。
手数料率と併せて覚えておくと良いポイントについても一緒にご紹介しましたので、少しこんがらがってしまったかもしれませんが、これらの留意点も併せて押さえておくことで、不動産業者の見極めという点においても役に立てることができるかと思いますので、是非活用していただけばと思います。
売買契約書にかかる印紙税
続いては「印紙税」についてですが、これは「売買契約書」にかかってくる税金で、当然”税金”ですので交渉の余地等もなく、否応なしに支払うことになるものです。
この「印紙税」の金額ですが、令和2年(2020年)3月31日までに作成されたものについては、軽減税率が適用されます。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
10万円超50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円超100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円超500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超1千万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1千万円超5千万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5千万円超1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
5億円超10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
10億円超50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
50億円超 | 60万円 | 48万円 |
印紙税が必要であるにも関わらず貼付していなかった場合には、その印紙税額の”3倍”の額の過怠税を徴収されることとなりますし、その印紙に消印がされていなかった場合には、その印紙税額と同額の過怠税を徴収されることになりますので、くれぐれも注意が必要です。
場合によって必要となる費用
ここまで、不動産売却において「必ず必要となる費用」について見てきましたが、続いては「場合によって必要となる費用」についてご紹介していきたいと思います。
冒頭でご紹介したように、不動産売却というのは、その売主(及び買主)の事情や物件自体の現況等によって様々な状況・条件の違いというものが生まれてきます。
そのため、ここでご紹介する「場合によって必要となる費用」というのは、必ずしも不動産を売却しようとする全ての人に当てはまる項目ではありませんが、自分がどのような形での売却を希望しているのか、そして買主側がどのような引渡しを希望しているのかというように、後々の自分自身のケースに当てはめて考えてみてもらえると参考になるかと思います。
また、一部の費用については、売却手続きを進めていく中で、実際に買主との交渉段階になってみなければ判らないという部分もあるかと思いますので、そういう状況が生まれてきた際には是非またこの記事を見返していただけると幸いです。
クリーニング・リフォーム・解体費用
これは文字通り、「クリーニング」や「リフォーム」、「解体」といった作業が必要となった場合に負担しなければならなくなる費用です。
各作業の金額については、その規模や工程等により全く異なってきてしまうため、ここでいくらかかりますと断言することは残念ながらできません。
しかし、ひとつの”目安”ということで言うならば、「クリーニング」については数万円から数十万円程度、「リフォーム」は本当にピンキリですが数百万円から数千万円、解体については【1坪:3万円程度】と言われていますので、百万円前後は最低でも必要という目安を持って見積もりを立てておいた方が無難と言えるでしょう。
築年数の古い物件や、災害等で建物の一部にガタが来てしまっている等の事情により、クリーニングやリフォームを行うことで、より買主側に魅力的に見えるような形で売りに出したいと思えば、予めそうした対策を取っておく必要が出てきます。
そしてさらに、前章でも指摘しました様に、売却の際の買主側との交渉次第では、何か特別な対応が必要となるケースも考えられます。
買主側から「更地での引渡しであれば購入する。」といった条件を提示され、さらにあなた自身も「それでも今売り切っておきたい。」と考えたとすれば、その時にはこちら側(あなた)で解体の費用を負担して更地にしてしまうといった必要が出て来ることもあろうかと思います。
これらはあくまでその物件の現況または買主との交渉次第ということになってきますが、自分の物件をより魅力的に感じてもらい、そして何より確実に売却を実現するためにはどういった形で売出しに向けた準備を整えておくべきか、という観点からしっかりと検討しておくということも非常に大切になってきます。
「自分の物件がどの程度需要が見込めるものなのか。」、「どういった対策を取っておけばより魅力度を高めることができるのか。」というようなことがよく解らないという場合には、信頼できる査定業者や不動産業者に相談してみるということも大切ですね。
→ NO37
土地境界確定測量費用
これはその字面だけを見ると「なんだかややこしそう。」と感じてしまうかもしれませんが、要は売却するにあたって、『隣の土地との”境界線”』を改めて明確にするための調査にかかる費用ということになります。
金額については当然その規模等にもよりけりではありますが、概ね30~50万円程度の費用を見積もっておけば良いとされています。
この境界確定の手続きというのは、そもそもどこまでが自分の土地なのかという権利を改めて明確にしておくという意味もあるのですが、それに加えて、「地中埋設物」に関する責任の所在や義務を明らかにするなどの意味でも非常に重要な手続きとなる場合もありますので、隣地との境界に曖昧な部分が残っている場合などについては、こうした手続きも検討する必要があるでしょう。
この件について詳しくは、 NO250
抵当権抹消登記費用・司法書士費用
売却を目指す物件に「ローン」が組まれている場合、銀行等の金融機関から、その物件に対して「抵当権」を設定されている場合がほとんどです。
「抵当権」とは、ローンを組んだ人がもしもその支払いができない状況に陥ってしまった場合には、その物件を差し押さえて競売等の方法によって売却し、現金化することができる権利のことです。
この抵当権を解除するための費用というのがこの『抵当権抹消登記費用』で、その手続きを代行してもらう司法書士に支払う手数料というのが『司法書士費用』ということになります。
抵当権を抹消するためには、法務局にてその抹消のための登記を行わなければならないのですが、その際「登録免許税」というものが必要となり、これが不動産1件につき、1,000円かかります。
したがって、司法書士費用の相場がおおよそ1万円前後、高くても13,000円程度を見込んでおけば大丈夫かと思いますので、併せて15,000円程の費用がこの抵当権抹消登記費用ということになってきます。
抵当権の抹消について詳しくは、 NO254
ローンの一括返済費用
上記の抵当権についてのお話は、実はこのローンの返済が済んでいたとしても起こり得ることで、当初ローンを組んだ際に設定された抵当権が、住宅ローン完済後も抹消されぬまま残っているということがあり得ます。抵当権というのは、ローンを完済すれば自動的に消えてくれるというものではないのです。
その一方で、この『ローンの一括返済費用』というのは、まだローンが残っているという状態を前提としています。
つまり、売りたい不動産について「ローンの残債が残っているものの、諸事情により売却したい。」という時に、その残債を一括で返済してしまうために必要となる手数料ということになります。
こちらの手数料の相場としては、手続きの方法、または金融機関ごとの違い等によって【0円~30,000円超】と開きがあります。
最近では、店頭ではなくネット上で手続きを済ませてくれる場合に限っては手数料を取らないという金融機関も増えてきていますので、自分の借り入れている金融機関の制度をよく確認し、こうした無駄な費用はなるべく抑えられるようにしていきたいところです。
税金(譲渡所得税、住民税、復興特別所得税)
「税金」に関しては、あなたが行った不動産売却によって”利益”が発生した場合にのみ、支払う必要が出て来ることになります。
この不動産の売却益に対する税金のポイントは、
- 当該不動産の所有期間によって税率に差がある
- 購入に要した費用およびその後のリフォーム費用などは必要経費となる
- あくまでも”利益”に対して課税される
ということです。
当然ながら、「利益なんて1円も出ていない。」という状態での売却であるならば、賦課される(税金を課される)ことはなく、税額は0円となり、確定申告の必要も出てきません。
不動産売却に係る税金関係のお話について詳しくは、 NO43
引越し費用
これはもうその売主ごとの事情によって全く状況が異なってくる部分にはなってしまいますが、もしも売却しようとする物件に、今も現在進行形で住んでいるという場合には、物件の引き渡しまでにどこかへ移り住む必要が出て来るわけですし、さらに言えば、新居に移るまでの”タイムラグ”があり、一旦は仮住まいに入る必要があるといった場合などには、2度の引越しが必要ということになってきます。
ここ最近では、「引越し難民」という言葉ができるぐらい、時期によっては引越しの予約が全く取れないといったことも発生しています。そのため、引っ越し業者側の供給が追い付かず、価格もうなぎ上り状態となっていますので、この引越し費用に関しても、時期をずらしたり、なるべく安い業者を狙える様に事前にリサーチをしておくなど、対策を練っておく必要があるでしょう。
家族単位での引越しともなれば、その金額もバカにはならなくなってきます。したがって、「早め早めに予約する」、「閑散期を狙う」、「自力で移動できるものは自力で引越す」といった工夫も必要です。
また、早めに新居(および仮住まい)に入れるのであれば、場合によっては引越し費用との比較で、家賃を支払ってしまった方が安いということも考えられるため、早めに新居を契約し、少しずつ自分で荷物を移動させる等の対策をとることで、引越し費用の大幅な節約に繋げることも可能です。
ただし、当然ですが、売却予定の不動産に現在居住しているわけではないということであれば、こちらの引越し費用については特に必要とはなりませんので、考慮する必要はありません。
まとめ
さて、今回は不動産の売却に際して必要となる費用・手数料の部分について網羅的にご紹介をしてきましたがいかがでしたでしょうか。
本文中でも何度も申し上げましたが、特に「場合によって必要となる費用」の項目については、個別事情等によりかなり大きな違いが出て来ます。
そうした項目を全てここで取り上げるというわけにもいきませんので、そこはあなた自身の個別事情に照らし、事前にしっかりと検討をし対策をとっておくことで”賢い選択”ができるよう、しっかりと計画を練っていただければと思います。
消費税も10%となり、時限措置となっている軽減税率も存在するように、売却のタイミングによって変わってくるような費用項目も存在していますので、当サイトの他記事やあなたが契約した不動産業者の声も頼りにしながら、是非無駄な費用は削り、コストパフォーマンスの良い売却を実現していただければと思います。
それでは。