「これから不動産を売却しようとしている。」という方、もしくは「今すでに、不動産の売却へ向けていろいろと動いている最中。」そんな方も、「不動産の”売却方法”」、「取引態様」というものについてはしっかりと整理ができているでしょうか。
「え?もう既に不動産屋さんに頼んで動き出してるけど、何かもっと良い方法があったの?」
そんな風に感じられた方もいるかもしれませんが、今回はそんな不動産売却の”入口”とも言うべき、「売却方法」という事について考えてみたいと思います。
万が一あなたがその不動産の”売り方”、”売る相手”を間違ってしまったりすれば、売却後の最終的なあなたの手取額に、それこそ何百万円という金額の差が生じてしまうといった事もあり得なくはありません。
したがいまして、非常に初歩的な内容にはなりますが、是非最後までご覧いただき、改めて頭の中を整理しておいていただければと思います。
それではさっそく参りましょう。
【アンサーBOX】あなたの疑問を解消!
- 「取引態様」には、「売主」「代理」「媒介」の3種類がある
- 手数料やサポートの違いを良く見極めて不動産業者との契約の判断を
- 不動産業者との契約時は、「一般媒介契約」を結ぶのが最も無難
- 不動産業者の実際の”信頼度”等によって適切な契約形態を選択する事が何よりも大切
Contents - 目次 -
不動産の”売り方”にもいろんな種類がある!?
不動産を売ろうと思った時、あなたはまずどんな”売り方”=「売却方法」を頭に思い浮かべましたか?
「不動産の売り方なんて全然わからないし、とりあえず適当な不動産屋さんを見つけ出して相談するしかないかな。」
もしくは、
「不動産関係の知り合いがいるから、とりあえず相談してみる。」
そんな風に考えて動き出したという方も多いのではないかと思います。
売却へ向けてもう既に具体的なアクションを起こしているという方であれば、不動産業者との契約の際などに契約書等で「取引態様」という項目を見かけたことを覚えている方もいるかもしれません。
実は、一口に「不動産売却」とは言っても、そこにはいくつかの方法・種類というものが存在しています。これらの分類のことを、不動産業界では「取引態様」という風に呼ぶのですが、それはどのような棲み分けによってなされているものなのでしょうか。
不動産売却では、この取引態様の違いによって、様々な部分に異なる点が出て来る事になります。
ただし、何も難しく考える必要はありません。1つずつ整理していくことにしましょう。
『取引態様』とは?あなたの不動産売却の分類
まず、「取引態様」という言葉の意味についてですが、これは端的に言うと「不動産取引における”当事者の関与の仕方”」を表したもの、という事になります。
通常、不動産売買に係る不動産業者との契約書(買主との契約書ではありませんので注意)というものは、不動産業者目線で作成されることになりますので、契約書等に記載のあるこの「取引態様」というのは、すなわち「不動産業者側がその売買にどのような立場で関与するのか」ということが書き示されているという事になるわけです。
そしてこの「取引態様」というのは、大きく「3つ」に分類されています。
- 売主
- 代理
- 媒介
以上の3種類です。(「貸主」というものもありますが、ここでは”貸借”は考慮せず、”売買”についてのみ考えるという事で「3つ」としています。)
では、これらの取引態様の違いというものが、売主であるあなたにとってどのような意味を持ってくることになるのでしょうか。
それは、不動産業者側が持つ”権限”や取引の最中に行った”行為”に対する効果の違いや、あなたが支払うこととなる報酬額の違いといった部分になります。
要は、法律上の取り扱い方が異なってくるのです。
具体的に言うと、あなたが取引態様をしっかりと認識しないまま売買の手続きを進めていった場合、あなたが不動産業者に”媒介(仲介)”を依頼していたつもりで、不動産業者が買主を探してくれていると思っていたにも関わらず、不動産業者が自社に都合の良い価格で直接買い取るという話になってしまっていた(直接取引)、とか、あなたとしては不動産業者に売却するつもりで話を進めていたのにも関わらず、実際には「媒介契約」となっていて新たな売主との売買契約が発生し、不動産業者に媒介手数料を支払うことになってしまった、といった食い違いが生じてしまう可能性があるという事です。
したがって、この取引態様については、不動産業者とのやり取りが始まった段階で、しっかりと確認を行っておかなければならない事項であるという事を覚えておくようにしましょう。
なお、不動産業者側には、広告時にこの取引態様を明示する義務があると同時に、契約時にも改めてそれを明示する義務がありますので、本来ならば業者側からその部分についても説明がなされるものと言える部分となっています。
また、もう既に不動産業者と契約を結び、売買の手続きを進めてしまっているという方であれば、その取引態様について不安があるという場合には再度確認をしてみるようにしてください。その上で、疑問点や上記の様な状態が懸念されるのであれば、不動産業者にその旨を伝え、必要に応じて変更等の手続きをとるようにしましょう。
それではここからは、それぞれの取引態様における特徴について確認していくことにします。
不動産取引における3つの『取引態様』
前章でご紹介したように、不動産取引における『取引態様』には、3つの種類が存在します。改めて確認すると、
- 売主
- 代理
- 媒介
以上の3つでしたね。各取引形態について詳しく見ていきましょう。
売主
まずは「売主」です。これはいわゆる”直接取引(直接契約)”をイメージしていただけると最も解り易いかと思います。
つまり、文字通り「売主」である不動産の所有者が、自ら買主との契約を締結する形になります。
その不動産を転売する権利を有する人であればこの「売主」という立場で取引を行う事が可能ではあるものの、通常この「売主」という取引態様は、不動産業者自らが宅地や建物を開発し、それを販売する際や、中古物件を自らリフォームして再販する際などにとられるものとなっており、不動産売却を行いたい個人の場合には、この「売主」という取引態様に該当するという事はほとんど無いかと思います。
ただし、個人とは言っても、個人事業主として不動産売買を行っているような方や、個人でも不動産業者を全く頼ることなく売買を行う場合については、この「売主」という取引形態に該当することになります。
また、メリット・デメリットについてですが、まずメリットについては、やはり間に仲介業者である不動産会社などが入らないということもあり、「余計な費用がかからない」という事が挙げられるかと思います。
他の2つの取引形態の場合には、いずれも不動産会社等の第三者が介入する事が前提となっていますので、当然そちらに支払う費用というものが必要になってくるわけですが、彼らを頼らずに何もかもを自分自身の手で行う直接取引である「売主」という形であれば、その分の費用を浮かすことができるわけです。
対するデメリットについてですが、これは費用が掛からないという事と”トレードオフ”の関係にもなってくるもので、やはり”プロ”の力を頼ることができない、という点に尽きるのではないかと思います。
不動産の売買というのは、非常に専門性が高く、なおかつ買手を見つけ出すために適切な広告宣伝を行ったり、実際に売却手続きに入った後においても、正しい手続きをスムーズに行っていく必要がありますので、それらの一連の流れを全て自分で行う必要が出てきてしまうというのは、不動産売買の素人にとってはもはや”デメリット”というより”非現実的”という次元になって来てしまうかもしれません。
また、手数料に関してですが、基本的に業者間での”直接”取引を前提としているため、手数料が発生することはありません。というよりも、売却代金の中に諸経費が含まれているという事も言えますし、そもそも売主と買主との直接取引では、その手数料を支払う相手というのが存在しませんので、当然と言えば当然です。
したがってこの「売主」という取引態様については、前述の様にやはり不動産業者間での取引を中心とした”プロ同士”ということが前提となっていると考えておけば良いかと思います。
代理
続いては「代理」という取引態様です。
これも文字通りにはなりますが、売主であるあなたから見ると、不動産業者があなたの「代理」をしてくれる形の事を言い表しています。
これは法律上の契約等に関する”権限”も与えられたと捉えられるものであり、「代理」契約に基づく不動産業者というのは、法律上の取り扱いで言えば、いわばあなた自身が行動しているのと同じになります。
したがって、通常であればこの「代理」という取引態様であっても、適宜売主(あなた)との相談等を踏まえて行動するというのが原則であると考えられるわけですが、物凄く悪い業者に捕まってしまったりした場合には、代理契約をしていたその業者が暴走をして、売主側、つまりあなたが受け入れられないような条件、納得のいかない形での売却に繋がる様な契約を”勝手に”行ってしまうリスクもある、という事になってきます。
ただし裏を返せば、次に説明するような「媒介」とは違い、あなた自身(売主)になり代わって「販売活動から実際に契約行為に至るまで全てを行ってくれる」という事になりますので、売主側の負担は最も軽いと考えることも可能です。
また、手数料に関してですが、この「代理」に関しては「全てを行ってもらう」という性質上からも解る通り、不動産業者側の負担は当然増えるという事になりますので、他の取引態様と比べると割高となることがほとんどです。
なお売主は、代理業務を担っていた不動産業者が買主を見つけ売買契約が完了した時点で初めて、その「代理手数料」を不動産業者に支払う必要が生じます。通常はこの契約完了時に半分を支払い、実際に物件の引き渡しの時点で残りの半分を支払うという流れが多いかと思います。そしてこの「代理」の場合には、あくまで売却者側、つまり「売主」を”代理”しているという立場になりますので、不動産業者は買主側からは手数料を受け取ることはできません。
媒介
この「媒介」というのは、一種の不動産用語とも言うべきもので少し小難しい感じがありますが、要は「仲介」の事になります。いわゆる「売主と買主の間を取り持つ役割」を果たす立場という事になり、不動産取引の取引態様においても最も一般的なものと言うことができます。
この媒介には、不動産業者が”1社”介入するという場合と、”2社”になる場合というのが考えられます。
1社の場合は、売主・買主双方をその1社で取り持ち、間に入って交渉等を行い、2社の場合は売主・買主それぞれに1社ずつ業者が入るという形になってきます。
ここで売主であるあなたが注意すべきは、間に入る仲介業者が1社の場合です。
なぜならば、その1社は、いわば「利益相反の関係にある者同士に間での交渉を調整する役割」を担うことになるからです。
つまり、端的に言えば、「100%あなたの見方であり続けるとは限らない」という事です。
これは疑い始めるとどんどんと悪い方向へと考えてしまうことになるのですが、最悪のケースでは、相手側の立場や都合ばかりを優先して、売主としての立場をおもんばかってもらえないという事も考えらると言えることになります。
逆に言えば、理想の形としては、こちら(売主)側が信頼のおける仲介業者に入ってもらう事ができさえすれば、それがその1社だけであっても、相手側も仲介業者を立てて来たとしても、こちら側の考えや優先事項をしっかりと考慮した形で安心して交渉・手続きを進めることができるということが言えるかと思います。
NO35
また、手数料については、この「媒介」の場合、その仲介業者が1社であれば、売主・買主の両方から受け取ることが可能となり、もちろん2社の場合はそれぞれの仲介契約者から手数料を受け取るという形となります。
この「媒介」という取引態様については、さらに3つの形に細分化されていますので、それらについても併せてご紹介しておきたいと思います。
媒介契約の3種類
3つの「取引態様」のうちの1つ「媒介」における、さらに細かな契約の種類について整理しておきましょう。
なお、これらの各種「媒介」契約については、解り易く「売主の立ち場」から見てどうなのかという角度からその特徴をまとめていきたいと思います。
専属専任媒介契約
- 媒介の契約ができるのはその1社のみ
- 他の業者とは一切契約することができない
- 売主(あなた)自身の力で買主を見つけ出しても直接契約できない
- 売主は契約業者から最低1週間に1回の頻度で状況報告を受ける(業者側は報告の義務を負っている)
- 契約締結から5日以内に「不動産指定流通機構(不動産業界共通の物件情報ネットワーク)」へ物件情報を登録
- 媒介契約は3か月以内で、売却にそれ以上の期間を要する場合には更新が必要
専任媒介契約
- 媒介の契約ができるのはその1社のみ
- 売主(あなた)が直接見つけて来た買主とも契約することができる
- 売主は契約業者から最低2週間に1回の頻度で状況報告を受ける(業者側は報告の義務を負っている)
- 契約締結から7日以内に「不動産指定流通機構(不動産業界共通の物件情報ネットワーク)」へ物件情報を登録
- 媒介契約は3か月以内で、売却にそれ以上の期間を要する場合には更新が必要
一般媒介契約
- 複数の媒介契約を結んでも構わない
- 売主(あなた)が直接見つけて来た買主とも契約することができる
- 「無期限」での媒介契約を結ぶことが可能
以上の様な違いとなりますが、問題は「で、どれが一番良いの?」という事になるかと思います。
簡単に言うと、上から順に制限が緩くなっていくと同時に、その分媒介契約を結ぶ不動産業者側のサポートも弱めになっていくとイメージしてもらえれば良いかと思います。
なお、この中に出て来る「不動産指定流通機構」というものについてですが、これは通称「レインズ」と呼ばれていて、全国の不動産業者が物件情報を紹介できる業界内の情報網とも言うべきシステムとなっています。
上記の専任契約の2つに関しては、なぜこのレインズに数日以内に登録をする義務を負っているのかと言うと、不動産業者側が”ズル”をすることを防止するためです。
不動産業者は、1件の不動産取引からなるべく多くの手数料を得たいと考えます。各取引態様における不動産業者の受け取ることのできる手数料率というのは、法律上上限が決められているのですが、仲介の場合に関しては、売主のみとの仲介契約なのか、売主・買主両方との仲介契約なのかで受け取る事のできる手数料が変わってきます。
となると、仲介業者は専任での媒介契約を結ぶ事ができれば、その情報を自社のみの物件情報として抱え込んで、自ら買主を見つけ出そうとするインセンティブが働いてしまうことになるわけです。
つまりこの「不動産業者による(あなたの)物件の抱え込み」というのは、売主(あなた)にとっては、「知らないうちに”機会損失”を被ってしまっている」という事になるわけです。その仲介業者がレインズに素早く登録をしていれば、その情報をみた買手候補者を抱える他の不動産業者から問い合わせが入り、購入希望が貰えていたかもしれないのにも関わらず、登録がされていなかったことによって、売主は売却できるチャンスを失ってしまうことになるわけですね。
こうしたことから、専任の2つの媒介契約に関しては、レインズに速やかに登録するという事が義務付けられているというわけです。
この3つの媒介契約というのは、不動産業者のサポートの厚さや、真剣さを求める売主の想いもあり、専任2つを選択するという事も多かったのですが、反対に、一般媒介契約を選択して複数社と契約することにより、うまく不動産業者間における競争を促す事ができれば、売主としてもメリットも非常に大きくなると考えることができるでしょう。
また、「3か月」という契約期間についてですが、これも通常不動産の動き(売買の成立頻度)というのは、売りに出してから数か月が勝負だとされていて、それ以上長期の戦いとなってくると、余程マーケットの需給環境が悪いか、設定した売却価格に誤りがあるという事を疑ってかかった方が良いかと思われるため、この3か月という期間を1つの目安としています。
したがって、第一回目の契約が終了する3か月で全く売れそうな気配がないのであれば、媒介契約の業者を変更するといったことも検討されると良いのではないかと思います。
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結局、売主としてはどれが一番良いの?
3つの「取引態様」について解説をしてきましたが、それぞれの契約等についてイメージを持つことができましたでしょうか。
中には、「それで、結局はどうすれば良いの?」と思われた方もいるかもしれません。
そこで結論ですが、結論としては、各取引態様の解説の中でも触れた通り、現実的には「媒介 (仲介)」という形を選択し、その中でも「一般媒介契約」で複数の業者と相談しながら買主を見つけるとのが最も現実的であると言えるのではないかと思います。
まず「売主」という取引態様は、現実的に考えてやはり不動産売買の初心者には営業面や手続き面においてハードルが高過ぎると言わざるを得ないかと思います。
「少しでも手数料を浮かしたい」という気持ちは非常によく解るものの、一方でやはり不動産業者にうまく先導してもらう事ができるのであれば、そこはその手数料を支払ってでも頼れるパートナーとして力を借りるというのが、取引全体を成功させるという意味においては最善の選択であると考えられるからです。
また、「代理」に関しても、売主側の種々の負担が軽くなるとは言え、揉め事等も起こり得る不動産売買という取引の中において、業者側にあまりに強い権限を持たせ過ぎるというのもあまり良くないと考えることもできるかと思います。
非常に遠隔での不動産業者との契約で、どうしても媒介では不便が生じる等の特別な理由が無い限り、一般的にもわざわざ媒介ではなく代理にするというのは少数派であるという事も頭に入れておいた方が良いかもしれません。
もちろん、会社の歴史や実績、担当者の信頼性やサポートの手厚さなど、様々な面において非常に充実したフォローを行ってくれる不動産業者を見つけ出すことができたという事であれば、その業者と専任の媒介契約を結ぶという選択もあり得ると思います。
物件や自分自身の状況、そして不動産業者との出会いや信頼度の高さ、手続き面での自身にかかる負荷の限界など、様々な要素を鑑みて、代理・媒介のうちどれが最も売却を成功に導ける可能性が高いかというところから逆算して検討して見られると良いかと思います。
まとめ
さて、今回は不動産売却を検討する上での”入口”とも言える部分である、「取引態様」、売却の方法および不動産業者との関係性という事について見てきましたが、頭の中で整理はつきましたでしょうか。
実際に不動産売却の入口に立った時、その売主であるあなたが最も気になることはと言えば、やはりまず”価格面”の事ではないかと思います。
当然ですね。不動産取引というのは、人生でもそう何度も経験するものではありませんし、そもそも大きな金額が動くことになる”一大イベント”であるわけですので、価格面において「はたして自分の納得のいく価格で売却できるものなのだろうか。」と不安になる気持ちも非常によくわかります。
そんな価格面での不安に関しては、 NO39 で、また、理想の不動産業者の見つけ方については、 NO35 で詳細を確認していただけたらと思うのですが、今回のお話、”誰に”、”どのようにして”売却するのか、という、そもそもの「売却方法」という事についても、その売却を成功させるためにしっかりと考えて見られることをお勧めします。
実際の不動産取引の現場では、不動産業者との契約の時点で誤った判断をしてしまったばっかりに、その売却を納得のいく形で終えられなかったという事例もたくさん存在します。
そうならないためにも、既に不動産業者を決めて動いているという人であったとしても、あらためて今回の記事の内容を良く精査し、もう一度確認してみて下さい。
信頼できる業者と、満足のいく売却を達成できることを心より願っています。
それでは。